品質保証

EUにおける卓越した食品のリーダーとして、アイルランドはEUが義務付けた法律に加え、さらなる取り組みを行っています。近年、牛肉の分野では品質保証制度が国レベルで広く導入されました。これにより食品安全基準がさらに強化され、消費者の要望に応えることができます。EUでは、原産地呼称保護（PDO）、地理的表示保護（PGI）、伝統的特産品保証（TSG）といったEU全体を対象とする品質制度の導入や、アイルランドに拠点を置く欧州食品安全機関（EFSA）の設置など、こうした動きを積極的にサポートしています。

安全性とトレーサビリティー

EUは、食品安全性および動物衛生に関する最高の国際基準を守るため、「農場から食卓まで（farm to fork）」の一貫したシステムと、継続的なモニタリングを行っています。生産システム全体を通して、個体識別およびトレーサビリティが厳格に実施されています。これらの対策は、各加盟国の食品安全の所轄官庁がそれぞれ独立して実施しています。アイルランドでは、アイルランド農業・食糧・海洋省（Department of Agriculture Food and the Ma-rine）の管轄です。

動物個体識別とトレーサビリティ

肉牛の個体識別とトレーサビリティに関するEUの詳細な規則が1997年から施行されています。規則には以下の内容が含まれています。

両耳に装着された耳標による個体識別
出生から屠畜場までの移動に関する全データを記録した個体別のパスポート
各施設（農場、市場など）での登録簿の維持
管理
全データは各国政府の全国的なデータベースによって集中管理ーアイルランドでは、AIMS（家畜識別
移動管理システム；Animal Iden tification and Movement System）と呼ばれるシステムによって管理されています。

このような複合的できめ細かな識別とトレーサビリティのシステムにより、全ての牛肉製品は出生時にまで遡ることができるため、消費者はEU内で生産された牛肉および牛肉製品に対し絶対的な信頼を置くことができます。

EUREPOEAN BEEF & LAMB - Animal Identification & Traceability

アイルランドのすべての肉牛は出生時に耳標が付けられ、農場の移転や健康状態の履歴を、一生を通してすべての情報を記録するためのパスポートが個体ごとに発行されます。アイルランド農業省のAIMS（家畜識別・移動管理システム）を通じて個々のパスポートの確認をとらなければ、牛を生産施設に入れることはできません。

このシステムのおかげで、アイルランド産のすべてのヨーロピアンビーフは、加工、製造、包装のすべての工程で、出生と原産農場にまで遡ることができます。AIMSデータベースは、アイルランド農業・食糧・海洋省によって管理されています。これはオンラインでリアルタイムのデータベースであり、すべての群れのすべての個体の完全なプロフィールを提供するものです。出生から売買、加工に至るまで、すべての段階の詳細が表示されます。また、それぞれの個体が農場で過ごした時間も正確に記録されています。

牛肉のラベリング

EUの牛肉ラベル表示は、消費者にとってあらゆる情報にアクセスするためのカギです。生肉、冷凍肉、加工肉など、EU域内の消費者向けに販売される牛肉すべてに、消費者が生産チェーンから個体が生まれた農場まで遡ることのできる、詳細なラベル情報を記載することが義務付けられています。これにより、消費者に徹底的な透明性を提供しています。

EU域内のすべての獣医学的管理は、各国政府の所轄官庁が監督する加工業者からは、独立したものです。これらの管理は農場レベルから始まり、製品が消費者のもとに届くまで続きます。EUの規則には、肉牛に投与できる物質について定められています。ホルモン剤や成長促進剤はEUでは禁止されており、獣医師の厳格な指導のもとでのみ抗生物質を使用することが許されています。EU域内の牛肉の加工・包装施設は各加盟国政府の監督下にあります。

コールドチェーンが途切れることのないよう、衛生規則には特別な注意が払われています。食肉加工に携わるスタッフは、最高基準の食品安全性および衛生基準を満たすよう、高度なトレーニングを受け、専門資格を取得しています。

牛肉の加工

ヨーロッパには39万5千の肉牛農場があり、780万トンの牛肉が生産され、そのうち290万トンが輸出されています。EUでは、出生から屠畜および加工までの一連の家畜の生産に対する厳格なガイドラインと義務が定められています。これにより、牛肉製造の各段階において最高基準の食品安全性と品質が保証されます。アイルランドには、EUの認可を受けた輸出用牛肉加工施設が32カ所あります。EUの法律では、屠畜の最初から最後まで、政府公認の獣医およびサポートスタッフ（公認補佐官）がその場にいることが義務付けられています。

衛生

屠畜後の処理は、生産工程で枝肉の汚染が起こらないよう、厳密な手順に沿って行われます。工場の作業員は技能に優れ、高度なトレーニングを受けており、最高の衛生基準を守って作業を行うことができます。この工程は工場の品質管理部門、および所轄官庁の職員によって監視・検証されます。厳密かつ検証可能な衛生慣行に従うことで、製品の長期保存が可能になります。

等級分け

肉に含まれる筋肉と脂肪の量を評価するEUROP基準に従い、牛の枝肉の格付けを行います。アイルランドでは、専門の加工業者が、部分肉の切り分けや注文のあらゆる仕様にきめ細かく対応します。このようにして、80を超える国々のさまざまな消費者から注文があり（小売顧客はヨーロッパだけで100以上）、それぞれに特別な要求があるにもかかわらず、どの注文の仕様も確実に実現しているのです。

EUREPOEAN BEEF & LAMB - Quality grass-fed beef

グラスフェッドビーフ

EUの畜産では、新鮮な牧草と保存された牧草（サイレージや乾草）に大きく頼っています。ヨーロッパは、比較的中小規模の現代的な家族経営の農場が中心で、他の国々で行われている、広大な肥育場を用いた大規模な畜産とは大きく異なります。EUの肉牛は、一生の大半を野外で、青々と茂る牧草を食べて過ごします。質の良いグラスフェッドビーフ（牧草飼育牛肉）を生産するために重要なのは、牛を本来の生息環境で、本来の生態に沿った形で飼育することです。EUにおいては、野外放牧が最も一般的な飼育方法です。加盟国の多く、特に山岳地方には、古くから放牧の伝統があります。家畜の群れが季節ごとにいくつかの放牧地間を移動する「移牧」では、冬は低地へ、夏は高地へ移るのが一般的です。気候が特に穏やかで牧草の生育に適しているアイルランド西部では、その移動方法が逆転します。一部の農家は冬の間、飼育している牛を標高の高い台地へ連れて行き、放牧します。この石灰質の台地は、低地に比べてかなり温暖です。近くに広々とした草地と乾燥した寝床、豊富な水があるため、牛にとって非常に良い放牧環境です。また、餌となる牧草とともに、野生のハーブも多く自生しています。そうしたハーブの中には肉牛が好んで食べるものもあり、肉牛の健康全般や牛肉の品質の向上に役立っています。アイルランドの牛肉分野は、牧草をベースとした農場レベルの生産システムに根差しています。牧草の生育に理想的な気候という恵まれた自然条件に、アイルランドの農家が代々受け継いできた管理手法が結び付き、この国の牧草ベースの生産システムは、健康的で、自然で、美味しい牛肉製品を生産することを可能にしています。

グラスフェッド基準

EUREPOEAN BEEF & LAMB - Grass Fed Standards

Bord Biaの牛肉および乳製品におけるグラスフェッド計画（The Bord Bia Grass Fed Scheme for Beef and Dairy）は、市場の要請に応えて策定されました。アイルランド産牛肉のグラスフェッド基準の作成にあたっては、活発な継続的協議が行われてきました。このグラスフェッド基準は下記の二つの重要な条件に基づいています。

牛が一生の間に摂取する飼料のうち、生重量ベースで90％以上は牧草か牧草で作られた飼料でなければならない。
牧草を食べさせる日数は年平均220日とするが、土壌の性質や天候が原因で放牧シーズンを長くすることができないような場合には最大40日を差し引くことができる。

グラスフェッド製品に対する市場の需要がかなり高いことが、調査により明らかになっています。「グラスフェッド」は消費者がよく知っている言葉であり、プレミアムで自然なもの、そして健康に良いといったポジティブな印象を持っています。消費者はまた、グラスフェッド牛が野外で「より自然に近い」生活を送り、倫理的に扱われている可能性がより高いとも考えています。アイルランドはすでにグラスフェッド生産に積極的に取り組んでおり、グラスフェッド基準によって、生産システムに関する要求をしっかり検証できるようになっています。

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